こんにちわ、妻の知枝です。今回は私が書かせてもらっています。
すっかり秋の気配が深まってきたので、ノースキーの階段ディスプレイも模様替えをしました。
澄んだ高い空をイメージして、今回の舞台はカナダ・アルバータ州のフォートマクラウドという場所です。
カナダの地図で言うと、真ん中よりも西側の南の方。
ここで、ネイティブの雑草とカナディアンホースを育てているお家にしばらくの間お世話になっていた時の写真を使っています。
その当時の日記を抜粋しながら、少しご紹介。
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ここはただっ広い平原に囲まれていて、かなり気持ちの良い場所だ
インディアンの歴史も数多く残っている場所で、家の周りにあるものと言えば、大平原と無数の風力発電しかない。
とても静かで、ふと窓を覗けば野生のうさぎや鹿がじゃれている姿が飛び込んでくる。
朝、早く目覚めたときは家のすぐそばにある小川を渡り、丘の上まで朝日を見に行く
平原から上る朝日は、ときどき見たこともないような色を作る
夕方になると、どこからかコヨーテの遠吠えとそこらじゅうにいる牛の鳴き声がこだまする
夕日に反射した草原と風車と馬の姿には、ついつい見とれてしまう
どういう経緯でなのかよく分からないけど、この場所にテントをかついだ旅人が時々訪れたりする
ここのファーム主はおっとりしてかわいらしいハイジと、その旦那様?
彼の名前はデービッド
一言で言うと、彼はかなりブッ飛んでいる
彼は猫とタトゥーと古いものをこよなく愛していて、ビンテージの物や古い看板や自転車、車、オールドスタイルのいろんなものを集めている
さらに彼は音楽が大好きである
いろんな楽器を持っていて、特にバンジョーと呼ばれる楽器を100台以上持っている
かなりのコレクターで、家の3分2のスペースは彼のアトリエと化し、さらに車で30分ほど走った先に古い馬車が大量に納まっている、ドデカイ倉庫を持っている
昔は博物館にしていた、と言っていたが本当だろうか?
家の周りに無数にある、わたしにはただの古びた鉄のカタマリにしか見えない物体も、ひとつひとつ丁寧に、ねじの一本までも、これは何年に作られたもので、どの部分のパーツなのかも漏らさず説明してくれる
彼はレズビアンやミュージシャン、そしてインディアンの友達が多く、友人たちとの出来事や、自転車でカナダを横断したことがあるとか、ここに住む前は全裸で生活していたとか、毎日楽しい話を聞かせてくれる
ただ彼は話し出すと止まらないタイプのようで、一度話し込むと半分以上は何を言っているのかよくわからない
そんな彼が、『インディアンの特別な場所へ連れて行ってあげるよ』と言って、ハイキングに連れ出してくれた
そこは、かつてインディアンがバッファローを追いかけ、岩に文字や絵を残した場所でトルコの カッパドキアを思わせる、無数のキノコ岩が広がる谷だった
さらに『僕の大好きな場所へ連れて行ってあげる』と言って、そこから奇形岩の谷を4時間ほど歩いた
軟弱な筋肉と持久力しか持ち得ないわたしには、それはかなり過酷な道だった
胸まである川を渡り、道なき茨の藪の中をひたすら歩き、いくつもの岩を登った。
『ここだよ』と言ってやっと着いた先は、キノコ岩に囲まれた広い草原に、彼がこよなく愛すワーゲンの廃材が無数に転がっていた。
ただそこは、ひたすら静かで気持ちのいい風が吹く場所だった
帰りには、彼のお気に入りの寿司レストランに連れて行ってくれた
メニューにケンタッキー巻きと言われるものがあった
彼はフォークで器用に天ぷらうどんを食べていた
そんなわけで、わたしは今、彼のおかげでかなり素敵な時間を過ごさせてもらっている
2008.6 Fort Macleadにて