スイカはお好きですか?私は大好きです。
叩いたときのポンポンという乾いた音も、いい加減な黒いたて縞も、包丁を入れた時のざっくりとした感触も、過度な水分も、懐かしい甘さも…。あの繊細さの欠片もない、無邪気な球体を愛さずにはいられない。
梶井基次郎はかつて、檸檬を手にして京の町を歩いたそうな。
丸善に放置された檸檬爆弾は、見事にあの本屋を粉々に爆破したけれど、もしもあのとき据え置かれたものが、檸檬ではなくスイカだったのなら、中京区全域を吹き飛ばしていたことだろう。
この夏は妻と二人でスイカを沢山食べた。妻のお腹の羊水は、もしかするとスイカ風味かもしれない。