blog

一枚の写真

2013年08月23日

鉢植え

 

 

木製の写真たてに入った、一枚の古びた写真が自宅の出窓にある。今の家に引っ越して来たときに、妻が大事そうに抱えてきたものだ。

 

写真は少しピンボケしていて、一本の草がひょろりと伸びたプランターが写っている。かすれた日付に目を凝らして見ると、92年4月18日、とある。ずいぶんと昔の写真だ。

 

「何の写真だか、わかる?」と妻が聞く。

「さあ、何だろう」と私は読んでいた本を閉じて答えを探す。

 

なんでもこれは、生まれて初めて育てた植物の写真だとか。そんな写真を大切に持ち歩いている人を、私は他に知らない。

 

妻は花屋に勤務しており、結婚式を彩る花々を作り続けてきた。最近は私の宿を緑でどう彩るか、日々考えている。

 

「宿の中に、沢山の色はいらないと思う」と彼女は迷いなく言うのだ。「一番綺麗な色は、植物の緑だから」